熊本県の蒲島郁夫知事が球磨川の治水方針として国に、支流の川辺川への新たな流水型(穴あき)ダムの建設を求め、国も応じたことを受けて、ダムに反対する市民団体は22日、「流水型でもダムでは命も清流も守れない」として抗議集会を開き、熊本市内をデモ行進して県民にアピールした。
市民団体などでつくる実行委主催。市国際交流会館であった集会には約350人(主催者発表)が参加した。
7月豪雨でいずれも自宅が全壊した被災者3人が登壇し、「それでもダムには反対だ」と意見表明。人吉市下薩摩瀬町の林通親さん(71)は「暮らしを取り戻すのに必死な時期に、考える時間も与えずに地域を分断するダムを決めた」と嘆いた。球磨村渡の境目照久さん(63)は、球磨村長や人吉市長ら流域の首長が「簡単に国の圧力に負けてダム賛成に転じた」と反発。八代市坂本町の本田進さん(86)は「球磨川流域から遠く離れた場所にいる人たちがダムを推進している」と憤った。
「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」の木本雅己事務局長(69)=人吉市=は、河川に堆積した土砂の撤去など、ダム中止後に会が訴え続けた対策を行政が実施してこなかったと批判。「やっていれば今回ほどの被害は生まなかった」と訴えた。
中島熙八郎・県立大名誉教授(73)=熊本市=は、国や県などの検証委員会が「仮にダムがあったら人吉の浸水面積を6割減らせた」とした点を「仮定の話には答えられない、というのが行政の姿勢ではないのか」と皮肉った。さらに、ダム問題に議論を集めることで「支流の対策など、自分たちがやってこなかったことをダムに押し付けようとしている」と指摘した。
大会では「穴あきダムでも環境に多大な悪影響を及ぼす」とするアピール文も採択。新市街や下通アーケードなど熊本市中心部約2キロをデモ行進し、「ダムはいらない」と買い物客らに訴えた。(太路秀紀、堀江利雅)
参照:熊本日日新聞(https://this.kiji.is/703379776895353953?c=92619697908483575)